1964年の新潟地震から60年。液状化の記録が示す新潟市の危険エリアは、今も大きくは変わっていません。液状化という言葉が広く知られるきっかけとなったこの地震の被害は、新潟市の地盤の弱点を、今も私たちに伝えています。新潟地震で液状化した地域と、2024年の能登半島地震で被害が出た地域には、重なる場所があります。この記事では、新潟地震の記録から分かる新潟市の危険エリアと、住まハザのスコアを使った確認方法を解説します。
✍️ この記事の執筆者について
NoTown代表(新潟市西区・東青山)
建築業界20年・不動産業界10年・損害保険販売6年の経験を持つ新潟市の専門家。二級建築士・宅地建物取引士・FP・損保代理店の資格を保有。自宅が地震で被災した際の保険申請も実体験として経験しています。2026年7月の大雨でも現地確認を実施した新潟市の防災と不動産のプロです。

1964年新潟地震が証明した液状化の恐怖
1964年6月16日13時01分、新潟県下越沖を震源とするマグニチュード7.5の地震が発生しました。新潟市の最大震度は5で、死者は26人、住家の全壊は1,960棟、半壊は6,640棟にのぼりました。地震の約15分後には津波が襲来し、新潟市では最大約4mに達しています。
この地震が世界に知られているのは、建物そのものは壊れなくても、地盤が支持力を失えば建物が傾き、倒れることを示したからです。液状化の研究が本格的に進む契機にもなりました。
川岸町の県営アパートの傾斜
8棟のうち3棟が傾き、4号棟はほぼ横倒しになりました。建物自体は大きく壊れないまま、液状化で地盤が支えを失った典型例です。
昭和大橋の落橋
竣工からわずか1か月後の橋が、液状化による地盤の移動で、橋桁が落下しました。
鉄筋コンクリート造の建物の沈下・傾斜
新潟市内の鉄筋コンクリート造の建物1,530棟のうち、189棟が、上部構造が壊れないまま沈下・傾斜しました。
側方流動
液状化した地盤が水平方向に動く現象で、信濃川沿岸では最大12mの移動が測定されました。
当時の被害の詳細は、新潟市の過去の災害4区徹底比較|地震・水害から学ぶ防災対策で解説しています。
60年経った今も変わらない危険エリアの分布
建物は建て替えられ、街並みは大きく変わりました。しかし、地盤の成り立ちは60年たっても変わりません。液状化しやすい土地は、おおむね次のような場所に分布しています。
中央区 信濃川河口の低地・旧河道・埋立地
1964年に液状化の被害が集中したのは、川岸町・万代・山ノ下など、信濃川沿いの低地と埋立地です。現在は都市部で地盤改良が進んだ場所もあります。
東区 阿賀野川河口の平坦な低地
新潟空港周辺を含む低地で、液状化と津波による冠水が起きました。
江南区 亀田郷の低湿地
泥炭層を含む軟弱な地盤で、液状化と沈下が重なり、浸水も長引きました。
西区 砂丘の高台と砂丘間の低地
西区は、地盤が固い砂丘の尾根と、地盤が緩い砂丘間の低地が交互に並びます。1964年も、五十嵐・寺尾・内野の高台では被害が少なく、小新・青山・大野町などの低地で液状化が起きました。
西区の過去の災害は、新潟市西区の過去の災害|1964年新潟地震の液状化被害と教訓で詳しく解説しています。
住まハザのスコアと1964年の被害エリアの一致
住まハザは、町ごとの液状化リスクを1〜5のスコアで表示します。数字が大きいほど、リスクが高いことを示します。西区のデータを見ると、地盤の違いが、スコアと海抜にはっきり表れています。
低地の町(スコア5・海抜が低い)
小針南(海抜-1.1m)、寺尾東(海抜-1.3m)、東青山(海抜-1.0m)は、いずれも液状化スコアが最高の5です。大野町(海抜1.4m)もスコア5で、1964年に液状化した低地にあたります。
高台の町(スコア3・海抜が高い)
五十嵐東(海抜25.2m)、寺尾西(海抜27.6m)、大学南(海抜27.4m)、小針台(海抜25.3m)は、海抜が20mを超え、スコアは3です。
📌 ポイント
同じ「寺尾」でも、寺尾東(海抜-1.3m・スコア5)と寺尾西(海抜27.6m・スコア3)では、地盤の条件がまったく違います。町の名前だけで判断せず、町ごとのスコアと海抜を確認することが大切です。
⚠️ 注意
住まハザのスコアは、町名単位のおおよその危険レベルです。1964年の被害エリアとの重なりは傾向であり、個別の土地の安全性を保証するものではありません。購入を検討する物件は、地盤調査の結果もあわせて確認してください。
能登地震から学ぶ新潟市の現在のリスク
2024年1月1日16時10分、能登半島を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生し、新潟市では震度5弱を観測しました。西区を中心に、1.1万件以上の液状化被害が出ています。建物の傾きや沈下、道路の波打ち、マンホールの浮き上がり、地面からの噴砂が相次ぎました。
興味深いのは、住まハザの液状化スコアの平均が4区で最も低い西区に、被害が集中したことです。信濃川が運んだ砂が堆積した砂州の地盤と、地下水位が高い低地が広がっているためと考えられます。
①被害の場所は、過去と重なる
1964年に低地で液状化した大野町は、2024年にも被害が報告された町のひとつです。地盤が同じなら、同じことが繰り返されます。
②スコアは平均ではなく、町ごとに見る
西区は平均スコアが低くても、スコア5の町が複数あります。区の平均だけで判断することはできません。
③事前の備えが被害を左右する
地盤調査・基礎の仕様・地震保険の有無が、被災後の暮らしを大きく変えます。
2024年の被害の詳細は、新潟市西区の液状化リスクを解説で確認できます。液状化と土地選びの考え方は、新潟市の液状化リスクマップで見る「買っていい土地・避けるべき土地」で解説しています。
液状化リスクを踏まえた家選びの基準
過去の地震の教訓を、これからの家選びに生かすには、次の5つの基準で確認してください。住まハザのデータでは、海抜10m以上でスコア3以下の町が、安全性の高い目安になります。
①住まハザで液状化スコアと海抜を確認する
スコア3以下、海抜10m以上を一つの目安に、候補の町を絞り込みます。
②過去の被害の記録を確認する
1964年の被害の記録と、新潟市が公開している2024年の被害状況マップで、実際に被害があったエリアかどうかを確認します。
③地盤調査の結果を確認する
物件ごとの地盤の強さや液状化の可能性は、地盤調査で確認します。
④基礎・地盤改良の仕様を確認する
ベタ基礎や地盤改良の有無は、被害の大きさに直結します。
⑤地震保険に加入する
液状化による建物の傾き・沈下は、地震保険の補償の対象です。火災保険だけでは補償されません。
■ スコアが高くても検討できる場合
地盤調査で支持力が確認され、地盤改良などの対策が取られている。地震保険に加入できる。リスクを織り込んで、価格が抑えられている。
■ 慎重に考えたい場合
海抜がマイナスで、スコアが5の町。過去に被害の記録があるエリア。地盤や基礎の仕様が不明で、対策の費用を見込めない。
NoTownは、新潟市西区の不動産会社として、二級建築士・宅地建物取引士・FP・既存住宅状況調査技術者の資格を持ち、損害保険の代理店でもあります。ハザードスコアを踏まえた物件の選定、建物の診断、地震保険を含めた保険の見直しまで、一つの窓口で相談できます。
まとめ——過去の記録を、これからの家選びに生かす
✅ この記事のまとめ
・1964年の新潟地震(M7.5)は、液状化で建物が傾き、倒れることを示した。川岸町のアパート、昭和大橋の落橋が象徴的な被害
・地盤の成り立ちは60年たっても変わらず、信濃川・阿賀野川沿いの低地、亀田郷の低湿地、砂丘間の低地は、今も注意が必要
・西区は、五十嵐・寺尾西などの高台と、小針南・寺尾東・東青山などの低地で、スコアと海抜が大きく異なる
・2024年の能登半島地震では、西区で1.1万件以上の液状化被害が出た。区の平均ではなく、町ごとに確認する
・家選びでは、スコア・海抜・過去の被害・地盤調査・地震保険を確認する
60年前の記録は、これから家を選ぶ私たちへの、貴重な教訓です。まずは住まハザで、検討中の町の液状化スコアと海抜を確認してください。
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※1964年新潟地震・2024年能登半島地震に関する数値は、公表されている資料等に基づく概要です。住まハザのスコアは町名単位のおおよその危険レベルであり、個別の物件の安全性を保証するものではありません。